わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

彩藤アザミ「峠の一家」小説新潮2021年8月号

 8月号は毎年恒例の怪談特集です。ホラー雑誌ではないのであまり怖いのは困りますが、今年の作品群は怖さのレベルが例年より上がっていたように思います。中でもこの作品が一番怖かった~。カレーの辛さで例えると「5」の激辛です。

 それではさっそくあらすじに移りましょう。

 車で旅行を続ける大学生の黒川と井橋は山中で一人の老婆を助けます。老婆に勧められるまま老婆の家に泊まることになった二人を迎えたのは綺麗な女性でした。老婆の娘の須磨子です。

 翌朝二人の前に少女が現れます。昨晩山中で迷い今朝無事に戻ってきた孫の美代です。しかし、美代に対する老婆や須磨子の冷たい態度に二人は当惑します。

 朝、この人たちは自分の前世が何者であったかわかると自分の前世を語りはじめます。その時、突然、須磨子が錯乱します。この女系家族は何かの弾みで前世の記憶に囚われて錯乱する性癖を引き継いでいるといいます。その後、昨晩老婆が助けを求めたのは迷子になったわけではなく、女系を維持するために男を誘っていたのだと美代から聞かされます。

 一刻も早くこの家から逃れるために車を発車させようとすると老婆に強く引き止められます。その時、美代が突然車に乗り込み早く発車させるよう懇願します。

 老婆を振り切り車中で安堵しますが、井橋はあることに気づきます。老婆と須磨子は前世で亡くなるまでの話をしていたのに対して、美代は四歳のときに誘拐され殺されたあとのことまで話していたのです。

 美代の前世は被害者の女の子ではなく殺人鬼の生まれ変わりではないのか、また、老婆と須磨子が美代と距離を置いていたのは美代が前世のことで錯乱することを恐れていたからではないのかと気づいたのです。

 全貌を悟った井橋はサービスエリアで美代をまき急いで車を発進させます。それに気づいた美代は男の声と顔に変貌し車道を追いかけてきます。それでも何とか振り切りました。

 その後運転を代わった黒川は井橋をアパートに送ったあと自宅マンションに戻ります。地下駐車場に車を止めるとトランクから何やら鈍い物音が・・・。黒川は高速で渋滞に捕まったことを思い出し蒼白になって走り出したところで物語を終えます。

 途中怖かったけれど無事に帰れてよかったなぁと安堵させておいて最後の最後に追い打ちをかける手法です。背筋が凍りました。特集名は「ずっとこわいはなし」でした。