わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

宮下洋一「デス・ペナルティー 生と死のあいだで」(新連載)小説新潮2021年3月号

 連載は始まったばかりです。取材にも緊張が伝わってきます。この連載は「死刑の在り様を各国の現場取材を通して見つめ直す」新企画のようです。

 筆者はこれまで長年、人間の誕生と死を取材してきた経験から、「人はみな、それぞれの考え方と生き方を持ち、第三者が生死の決定を下すことは望ましくない、というスタンスから常に客観的な視点でこれらの問題をとらえる努力をしてきたつもりである」と自らの取材姿勢を明らかにしています。

 それでも、同じ「死」をテーマにしていても死刑はどこか違う匂いがあると、死刑については「分からないことばかり」であることを吐露しています。

 また、「欧州のような人権教育を受けてこなかった私は、いわば感情だけに任せてこの制度を俯瞰してきた。・・・そのせいか、死刑については、これらの国の人々と積極的に議論することを避けてきた」としています。

 これから始める取材では、「死刑存置が犯罪抑止になるとか、死刑廃止こそが基本的人権の尊重であるとか、一般的な存廃の是非論だけではない。その土地に生きる人々の声を聞き、価値観を探り、その土地だからこそ培われてきた極刑の本質を自らの眼で判断し、考えたい」としています。人権感覚や信仰、その土地の文化の違いの中で存廃している死刑について知りたいとする取材意図を明らかにしています。

 そのためには、「日本よりもまず、海外を調査してみたかった。その理由は日本人である私が、一旦、日本の概念を離れるべきだと考えたからだ。」と海外取材の意義を明らかにしています。

 第1回目はアメリカ・テキサス州での取材でした。テキサス州アメリカでも極端に死刑執行の多い州です。死刑執行予定日がホームページにアップされています。筆者は死刑執行1か月前に迫った人物に取材許可を取りました。取材時間は1時間です。

 このあとどのように取材を続け、各国の事情や死刑囚の心情もさることながら、筆者の認識がどのように変化するのか、しないのかを注意深く読んでいきたいと思います。