わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

加藤ジゲアキ「オルタネート」(最終回)小説新潮2020年9月号

 今月号(9月号)からは心躍る作品がみつけられませんでした。もちろん、好みの作品は複数ありますが、連載途中だと書きにくい面があります。そこで今回は消去法でこの作品を取り上げます。

 最終回では、これまでの主要な登場人物の出来事が完結にむけて展開していきました。展開の主軸は蓉(いるる)だったように思います。蓉チームがワンポーション(調理の全国コンクール)の最終ステージで調理する場面は息詰まる展開で堪能できました。三浦くんとの友情(恋?)も微笑ましい終結でしたね。

 ワンポーションとほぼ同時刻に円明高校では文化祭が行われていました。ここでも2つの出来事が進行していました。

 1つは尚志(なおし)を軸にした展開です。豊(ゆたか)のバンドへの飛び入り演奏と豊との友情の復活、深羽(みう)との淡い恋の終わりも描いていました。

 2つは凪津(なづ)を軸とした展開です。オルタネートが相性抜群と判定し、その後、オルタネートに不信感をもって交際を絶っていた桂田との再会が触れられていました。

 最初の頃に登場したダイキも最終回で登場しました。しかし、同性愛をSNSで公開し有名人になっていたダイキのエピソードはそれなりに熱をもって前半部分で触れていたことを思うと、付け足しの感がありました。

 作者と編集者はこの最終回は納得しているのでしょうか?私はやや残念な気持ちがあります。題名が「オルタネート」なら、登場人物がオルタネートに何らかの形で絡んでいて、最終回にむけて収束するのか拡散するのかを期待していました。しかし、オルタネートに絡んでいたのは凪津を軸とした出来事だけです。

 単行本になるまでにもう少しオルタネートに絡めた展開に修正するか、あるいは題名自体を変えてほしいですね。

 もし、この作品に事務的に題名をつけるとしたら、「私立円明学園高校」ですね。全編を通じて共通項は円明学園高校だからです。円明学園をシリーズ化してもいいと思いました。ともあれ、もし題名を変えるなら文芸作品にふさわしい気の利いた題名を期待します。