わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

加藤シゲアキ「オルタネート」(第4回)小説新潮2020年4月号

 この作品は本誌2020年1月号から連載しています。まだ第4回目なので、この後の展開はわかりませんが、ネットと現実の2つの社会の中で今を生きる高校生たちの成長を描く作品になると思います。

 主な登場人物は、新見蓉(にいみ いるる)(高3)。蓉は私立円明高校調理部の新部長です。高校生の調理の全国コンクール「ワンポーション」出場にむけ、他校のライバルとの友情や恋愛を絡めた展開が予想されます。

 伴凪津(ばん なづ)。凪津は同校の新入生です。高1になり高校生限定のSNSのマッチングアプリ「オルタネート」に夢中です。オルタネートが相性抜群と推奨した相手とのネットと現実の出会いとの葛藤が描かれ始めています。

 楤丘尚志(たらおか なおし)(17歳)。尚志は関西の高校を中退しています。小学生の頃からドラムを叩いていて、ユニットを組んでいた幼なじみが円明高校生になっていることがわかりました。今後、同校の生徒との接点が濃くなるものと思います。

 一文が短い文体が全体をシャープに引き締め、それでいて繊細な描写に魅了されてしまいました。思わず「うまい」と声を出してしまった箇所を抜き書きします。

 「尚志を一瞥すると、マコさんは目を閉じて息を吸った。薄いシャツの下で、お腹が膨らむのがわかる。一音目のロングトーンが響く。身体が音に共鳴し、震える。空気の形が変わった。芯のある音でありながら質感はふくよかで、殴られた衝撃と同時に、撫でられているような慈しみがあった。この音が近いのか遠いのかさえ摑み取れず、空気が歪んでいるのかと錯覚する。暑さも感じなくなって、地球じゃない遠い惑星に飛ばされたみたいだった。たった一音でその状態になるのだから、その後に続いた演奏に尚志の意識は途端に吸い込まれた。滑らかに進んでいく旋律の波は、尚志を浮かして転がし、戯れて包んで無邪気に運んだ。視界は刺激的で美しかった。粗暴な内面がきれいに整っていくのを感じる。とてつもない力だ、と尚志は思った。」

 いかがですか?

 今後、どのように展開し収束していくのか、古い言い方でいうと「高校生の群像」を短い文体でどのように描いていくのか注目ですね。