わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

今野敏「空席 隠蔽捜査外伝」小説新潮2019年9月号

 シリーズ最新作の「清明」では主人公・竜崎伸也が神奈川県警刑事部長に異動した最初の事件を扱っていました。

 今月号の作品は、竜崎が大森署を転出する当日まで遡り、後任署長の着任が遅れている「空席」の間に起きた事件を扱っています。まさに「外伝」としてファンにはうれしい設定です。

 いきなり第2方面本部の野間崎管理官の登場です。竜崎署長がいなくなると、途端に元の嫌な奴に逆戻りです。ただし、読者としては野間崎管理官はこのキャラでないと落ち着きません。この後も嫌な奴全開でお願いします。

 貝沼副署長、斎藤警務課長、戸高刑事(巡査部長)、根岸紅美生活安全課少年係巡査など、おなじみの面々に再会できて思わずにんまりしてしまいます。

 今回は、品川署管内でひったくり事件が発生し、その緊急配備に大森署も加えられます。野間崎管理官からの指令です。その直後に管内でタクシー強盗が発生し、緊急配備の指令が通信指令本部からあります。

 2つの緊急配備は人員的に無理なのでタクシー強盗に専念させてほしいと所管の久米地域課長は貝沼副署長に進言します。貝沼は通信指令本部管理官に連絡し、ひったくり事件の緊配を解いてもらいます。

 しかし、野間崎管理官はひったくり事件の緊配解除を認めません。困った貝沼らは新署長未着任の中で躊躇しながらも竜崎に相談します。竜崎は残務整理の一環として、相談にのります。

 竜崎は2つの事件は別件で明らかになった前島猛による犯行との仮説を立てます。緊配の対象を前島に絞ったことで2つの緊配が1つになり、そのまま犯人逮捕に至ります。竜崎マジックで一件落着です。

 翌日、新署長が大森署に赴任してきます。貝沼らが唖然とするほどの美人です。新署長を牽制しにきたであろう野間崎管理官もあまりの美貌に声を失うオチをつけて物語を終えます。

 このシリーズは2014年に1クールと2019年3月にスペシャルでテレビドラマになっています。竜崎伸也を杉本哲太が、警視庁刑事部長の伊丹俊太郎を古田新太が演じています。戸高善信刑事は安田顕です。

 このシリーズを読んでいると、竜崎の杉本哲太の印象は弱いのですが、特に、伊丹の古田新太、戸高の安田顕は活字に顔と声が重なります。