わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

楡周平「鉄の楽園」(第5回)小説新潮2018年3月号

 この作品は、昨今話題の東南アジアでの日本と中国での高速鉄道の受注競争を扱っています。ご案内のとおり価格競争では中国に勝ち目がありません。そこで、日本の強みを生かした受注はいかにあるべきかをテーマにしています。

 

 主な登場人物に触れておきます。

経済産業省貿易経済協力局通商金融課(R国への高速鉄道受注の交渉窓口)

 矢野 慎二(課長代理 41歳)

 橋爪 智弘(課長 矢野の上司)

 竹内美恵子(課員 キャリア官僚3年目 「撮りテツ」)

 

四葉商事(総合商社)

 相川 翔平(R国での高速鉄道担当 城南大学出身)

 

海東学園(北海道の過疎地にある鉄道専門学校。経営難で閉鎖の危機にある)

 相川 隆明(理事長 38歳 アメリカで会計士 相川家に養子に入る)

 相川 千里(創設者の娘 隆明の妻 アメリカでMBAを取得)

 

チャン財閥(R国で資源開発を担う大財閥)

 ジェームズ・チャン(総帥 城南大学に留学経験あり R国城南緑風会会長)

 キャサリン・チャン(総帥の娘 R国の貧困児童への教育支援がライフワーク 51歳 首相選への立候補を検討中)

 アンドリュー・チャン(総帥の孫? R国の資源会社の要職者 竹内美恵子と「やまぐち号」の撮りテツで遭遇)

 

 主人公は特定していないように思います。敢えて言えば、相川隆明(海東学園理事長)か、矢野慎二(経済産業省課長代理)か、相川翔平(四葉商事)でしょうか。 

 連載小説には、途中では結末が予測できないものと、予測できるものがあります。大抵の場合、予測できない方が読者を引き付けますがこの作品は後者です。しかし、興ざめすることはありません。途中に出てくる話題がどれも今日的な話題を扱っていますので楽しく読めます。 

 日本型提案の中身が大体予想できるようになりました。それは、“単に鉄道本体やその周辺のハードのインフラだけでなく、接客や清掃などのソフトを含めた人材育成や民度向上に向けた総合的な提案”らしいことです。 

 受注をめぐって中国との競争で疲弊する官僚のボヤキ、受注後をにらんだ民間企業のリサーチ、定員割れによる私学経営の苦しさ、中国資本によるリゾート開発計画に一縷の望みを託す自治体と地方銀行、キャサリンの取り組みなどがこれまで別々に描写されていました。 

 いよいよ、受注提案の核になる人材育成面での受け皿として海東学園が浮上してくるのだと思います。海東学園は中国資本からの買収話を断り、R国の留学生や社会人受け入れを想定した専門職大学に転身する構想に収れんしていくように思います。(私の予想は大抵ハズレますが今回は大丈夫ではないかと・・・) 

 頂上に置くべきピースが見えてきました。あとは、これまでのピースをどのように組み合わせるかという段階になっているように思います。ピースの色や形を楽しんでいます。