わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

西きょうじ「そもそも」小説新潮2018年2月号

 この連載エッセイは毎回、人間の社会的な行動や生理的な反応を脳科学などの自然科学の分野から、あるいは異分野と思えるような学際的な視点からわかりやすく説明していて、いつも興味深く拝見しています。今月号のテーマは「幸福」についてです。 

 「幸福とはどういう状態かを考えている時点で幸福とは言えない状態にあるかもしれない。そもそも幸福感の中にいるならば、『幸福とは?』などという問いは出てこないだろう。」という冒頭の指摘に、まず同感です。 

 幸福になることは目的ではなく、結果に過ぎないと指摘しています。ただし、幸福になるための準備や条件はあるとしています。こうなると幸福になるための準備や条件は「目標」の設定で、幸福になることは「目的」でもよいように感じられますが、ともかく読み進めました。 

 結論的にいうと、幸福感を得るための条件とは、①自分の腸内環境を改善し、②周囲とのコミュニケーションを通じて、③孤立しないことだと理解しました(多少、私なりの解釈をしています)。 

 ①腸内環境の改善が幸福の条件とする指摘は大いに知的刺激を受けました。筆者は、セロトニンという物質に着目しています。セロトニンは血管の緊張を調整する働きがあり、脳内にセロトニンが分泌されると不安や恐怖が抑えられ、痛みが緩和され、精神状態も落ち着くとしています。そのことから、セロトニンは幸福感に関係していると述べています。 

 セロトニンは約90%が腸内にあり、腸内細菌が減少しているとセロトニン前駆物質をうまく作れないとしています。そのため、腸内環境を改善することが幸福の出発点であると指摘しています。 

 ②コミュニケーションの大切さについては、統合失調症患者への対話の治療法の治験からその有効性を述べています。コミュニケーションの大切さについては常識的にも理解できます。 

 ③孤立しないことについては、利他的行動(良い行い)をすることで自分の幸福度があがるという視点から記述しています。また、利他的行動は伝染するとしています。そのことで幸福感も伝染し、ひいては社会も豊かになると述べています。 

 社会の豊かさにも言及してしまうのはやや単純化しすぎのように感じますが、言いたいことは理解できます。 

 一般的には、目的を達成するための準備や条件づくりが目標であると思います。そのことに当てはめると、幸せを得る(目的)ために、その準備のための計画(目標)を立てて、日々何をするか(実践)が問われていると理解しました。 

 目的と結果は対概念ではなく、視点の違いだけなので、両方ともあり得ると思います。ですから、幸福になることが実践の「結果」であることを否定するものではありません。 

 私は最近、ある人に「あなたはなぜ起業したいのか」と問いかけました。すると、その人は「お金を稼いで、究極的には幸せになるとためだ」と答えました。私は起業人の幸せとは、あなたがしたいことをして、そのことが周囲から認められている状態ではないかと話しました。 

 「周囲からの承認」には、コミュニケーションの存在や孤立とは無縁な状態、称賛や許容、やすらぎや安定があると思います。これらは幸福感につながる要素だと改めて整理してみました。