わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

田中兆子「あなたの惑星」小説新潮2017年11月号

 今月号の特集は「ネオ・エロティシズムの誘惑」と題して7作が収録されていました。わかりやすく言ってしまえばエロ小説の特集です。本誌は総合小説雑誌なので、ひととおりのジャンルの小説を収録しています。ですから、2、3年に一度はエロ小説の特集もありますね。 

 かつてエロ小説が官能小説といわれた時代がありました。時代とともに大衆の感性も、当然、私の感性も変わるので、一概に言えませんが、今回の作品群は何とも乾いた小説のように感じました。官能小説はもっとしっとりとした味があったように思います。どんな高名な作家が描いても即物的な表現を多用する作品では、奥ゆかしさが感じられず、好みから外れてしまいます。 

 さて、今回の特集作品で私がもっとも好みに感じた作品は「あなたの惑星」です。イグアナのような異星人に拉致(捕獲または保護)された主人公が宇宙船の窓から見たものは灰色に汚れた地球です。その後、その星の動物園で飼育され、絶滅危惧種として晴れて交尾するまでをユーモアとペーソスで描いています。 

 年の離れた唯一の雄と若い雌(主人公)を何とか交尾させるまでの飼育係の苦悩は、まるで動物園のパンダの飼育係の苦悩そのものでしょう。また、主人公が最後の妊娠可能な地球人として自らの使命を悟って、飼育係による衆人環視の中で交尾を完遂するまでの様は、パンダの気分を代弁しているようです。交尾が完遂すると飼育係から拍手が起きて物語を終えます。 

 こんなお気楽なエロ小説なら歓迎です。