わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

千早茜「硝子のコルセット」(第6回)小説新潮2017年3月号

 「西洋の女性がコルセットをしなくなったのは1920年代。・・・それまでの千年近く、コルセットは当たり前のものとして着られていた」「セクシャリティによって色などが決まってくるのは19世紀からです。それまではファッションを享受できる階層の装いは男女共に華美」等々、この作品は青柳服飾美術館を舞台に、西洋の服飾の知見がふんだんに散りばめられ、私には全くの未知の世界です。一気に魅せられてしまいました。 

 主人公は下赤坂芳(しもあかさかかおる「俺」)。デパートの婦人服売場のフロアにあるカフェでアルバイトをしています。身長176cm、体重62kgぐらい、顔のきれいな青年です。小さい頃から女性物の服が好きで、今も女性物の服をうまくコーディネートし身に着けています。 

 一方でもうひとり主人公がいます。白峰纏子(しらみねまきこ「わたし」)、同美術館の修復士です。修復士の仕事は「・・・服を新品の状態に戻すことではない。・・・その人が着ていた姿を再現することで人と時代を甦らせる。」 

 纏子は小2の時に家でクローゼット遊びをしている時に、母と手に亀のタトゥーのある男の情事の場面に遭遇し、その男に弄ばれたときから極度の男性恐怖症になっています。男性に触れられると過呼吸で失神してしまいます。 

 纏子の高校時代の同級生に青柳晶(あきら)がいます。晶は同美術館館長の養女です。同美術館で学芸員をしています。今は未だ明らかになっていませんが、なぜか纏子を必死に守ろうとしています。 

 物語は、芳が低学年だった時に母親にせがんで買ってもらったワンピースを着て外に出ると、年上の男の子に石を投げつけられ外傷を負った過去の記憶から始まります。この場面から何やら不思議な雰囲気にハマってしまいます。 

 芳はデパートでの同美術館の特別展示の設営会場で館長と出会います。そのときの出会いが縁で同美術館を見学するうちに、自分の天職がここにあることに覚醒し、とりあえずボランティアで雑用をするようになります。ここでの服飾の記述が異世界に迷い込んだような錯覚を覚えます。 

 纏子はデパートの特別展示の撤収時に芳と一度出会っていますが、芳が同美術館で手伝いをするようになって館内で遭遇します。このときに芳が挨拶で手を差し伸べようとしたときに纏子は失神してしまいます。芳は晶に「纏子に触れるな!」と思いっきり突き飛ばされます。しかし、その後もめげすに手伝いを続けます。 

 第6話までで、纏子が小2のときに亀のタトゥーの男から性的虐待を受けたときに一緒にクローゼットの中で遊んでいた女の子が、実は芳だったのではないかというところまで来ています。さてこの後、どのような展開になるのでしょうか。魅力的な作品です。

 

(追記)本作品は「クローゼット」と改題され、単行本化しています。