わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

瀬尾まいこ「夏がぼくを走らせる」(第3回)小説新潮2017年2月号

 この作品は不良の大田が3歳年上の中武先輩から1か月ほど1歳児のベビーシッターを無理やり頼まれ悪戦苦闘している様を今のところ描いています。 

 主人公の大田は現在高2。小学校時代からの根っからの不良です。中武も先輩といっても不良仲間の先輩というだけです。高校は1年で中退し、現在は建築資材会社で働いています。 

 物語はその中武先輩の奥さんが切迫流産で緊急入院することになり、頼める人が見つからず、やむなく大田にベビーシッターを頼むところから始まります。 

 頼む中武は心底悩んで大田を思い出したのでしょうけれど、かなりいい加減で軽く考えているきらいが随所に出てきます。大いに当惑する大田の不良言葉と子育て体験のミスマッチが妙にコミカルです。ただ、“コミカルと言っていいのか、本当に大丈夫か”と心配になってしまうのは確かです。 

 第1話から大田の子育てが始まります。1歳10か月の鈴香は終始泣いています。不良の大田ですからついカッとなって虐待してしまうのではないかとハラハラドキドキさせられます。大田は何とか頑張って初日を終えます。 

 第2話では大田が調理をします。鈴香が足元でせがむので片手で鈴香を抱きながら炒め物を作っています。ここでも鈴香にやけどをさせてしまうのではないかと、つい考えてしまいます。とりあえずそのような展開ではなかったのでホッとします。 

 第3話では鈴香を近所の公園に散歩で連れ出します。子育てグッズを持って出かけますが炎天下の外出です。動き回る鈴香が交通事故に会ってしまうのではないかと、ここでも心配させられます。公園デビューも果たします。公園での話題の中心は子供ですから金髪、ピアス、眉なしの大田でも、ママさんたちは気にする様子もないことを知ります。 

 こんな不良の大田ですが、大田は中3の時に駅伝のメンバーになり夢中になる喜びを密かに知っています。また、母子家庭で育った分、自分で食べるものは自分で調理することが身についていますので、実は生活力があります。相変わらず周りは不良仲間ばかりで大田は尊敬のまなざしを受けていますが、煙草はすでに止めています。大田がひと夏の子育て経験をとおして、何らかの成長を図る物語になるように思います。大田を応援したくなる作品です。

 

2017.07.22追記

単行本化にあたり、「君が夏を走らせる」と改題されました。意味がわからない題名ですね??