わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

月村了衛「カーガー」(新連載)小説新潮2014年10月号

 「第一章 西域に地獄が在る」この作品で一番初めに目に飛び込んでくる活字です。最初から穏やかではありません。チンピラが電話で抗議している場面から始まります。 

 主人公は、仁科曜子(にしなようこ)31歳。裏社会をテーマに取り組んでいる女性ジャーナリストです。ジャンルは違いますが、さしずめ初期のころの江川紹子さんか櫻井よしこさんを彷彿させます。 

 テーマは、新疆ウイグル自治区ウイグル族への中国共産党による弾圧です。初回は、ウイグル族への中国共産党による反人道的な差別や民族浄化が細かく描かれています。このテーマを題材にして大丈夫なのか心配になってしまいますが、文体や展開は分かりやすく、エンターテイメント小説の王道のような作風です。 

 初回に登場した主な配役は、主人公の仁科の他には、NPO法人ウイグル人道支援協会理事の松坂(42歳)。この人物はこれからも側面から仁科を応援するのだろうと思います。 

 次に、在日ウイグル人コミュニティーの隠れた実力者であったテギン・ヤンタク(老人)。しかしテギンは仁科が初対面で取材を開始しようとしたところ、何者かの3人組に刺殺されてしまいます。今際の際に残した言葉が「カーガー」です。カーガーの意味を解くことが作品のモチーフになっていくようです。 

 また、矢渡組直系の菊原組長と菊原組若頭の新藤将人(しんどうまさと)(37歳・二枚目)が出てきます。仁科はこれまでの取材から菊原組長に信頼され、定期的に面談を続けています。面談の中で仁科は菊原組長にカーガーについて質問したところ、「それは触れんとき」と遮られてしまいます。 

 仁科はカーガーの意味に抑えきれない好奇心を覚え、全身が焼かれる思いに駆られ第1話が終わります。広域指定暴力団を絡めて、ウイグル族弾圧への抵抗を描く物語となっていくようです。 

 またまた動きのある連載が始まりました。今後の展開に大いに期待しています。