わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

原田マハ「暗幕のゲルニカ」(第6回)小説新潮2013年12月号

 今月号では、ついにゲルニカが完成しました。作者は、ゲルニカ制作の過程をピカソの恋人ドラが丹念に撮影し続ける中で、ファインダーをとおしてドラの感性で描写しています。一見普通に読み過ごしてしまいそうですが、この小説手法はかなり高度な手法だと思います。刻々と完成に近づく制作過程がドラの緊張感となって読者に昂揚感を与えます。 

 作品に新たな展開が加わります。作者はゲルニカ完成の当日にカフェで塞ぎ込んでいる一人の青年を登場させます。青年の名はパルド・イグナシオ。スペイン屈指の名門一族、イグナシオ公爵家の長男です。パルドがピカソを敬愛していることを知ったドラは、ゲルニカの完成の場面にパルドを同行させます。今度は、パルドとドラの視点でゲルニカを丹念に解説します。ゲルニカの絵を多少なりともイメージできる読者なら、ゲルニカの登場人物や動物、構図、色使いを解説することで、各人のイメージの世界に鮮やかにゲルニカが輪郭をもって構築されると思います。そして大半の読者が戦慄するのではないでしょうか。私は興奮し涙があふれてきました。 

 それでは、いつものようにA群は好みの作品群です。B群も嫌いではありません。C群はどちらかというと好みから外れた作品ですが今月号にはありませんでした。

 

A群

1位 「暗幕のゲルニカ」 原田マハ

2位 「イノセント・デイズ」 早見和真

3位 「冬を待つ城」 安部龍太郎

4位 「ミラー テン・ストーリーズ」 乙川優三郎

5位 「転がらない球Ⅴ 名前のない古道具屋の夜」 柴田よしき

6位 「波止場にて」 野中柊

7位 「水曜日の凱歌」 乃南アサ

8位 「ゆらやみ」 あさのあつこ

9位 「金魚鉢の夏」 樋口有介

10位 「抱く女」 桐野夏生

11位 「死んでたまるか」 伊東潤

 

B群

12位 「生死の分水嶺陸羽東線」 西村京太郎(最終回)

13位 「メイのいない五月」 杉山隆男

14位 「チャンキ」 森達也

15位 「星夜航行」 飯嶋和一