わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

西村京太郎「生死の分水嶺・陸羽東線」小説新潮2013年11月号

 東京の北区十条の商店街にある喫茶店「茶房 一匹の猫」で働いていた河上あや、野村君子が相次いで、宮城と東京で殺害されました。 

 先月号(10月号)では、事件に保守党の中枢にいる中村兄弟が関与していると確信した喫茶店の老マスター・遠山慶介は無謀にも法廷闘争を挑みます。国政選挙が近づく中、保守党の大物政治家を相手取り、素人が裁判を起こしたのでマスコミが注目することになりネットユーザーなどに共感が広がります。遠山についた弁護士はおよそ敏腕の風貌ではありませんが、ネットを通じて世論の支持を得ることが作戦のようです。 

 今月号では、長男の中村賢太代議士の立会演説会に限って「茶房 一匹の猫」の地元商店街の常連客が中心となり、「人殺し」と連呼し選挙妨害に出ます。業を煮やした保守党選対本部は実行者の逮捕を要請し、事実何人かが逮捕されますが、次々と「人殺し」の連呼者が現れます。選挙期間中で事件を詳細に報道できないマスコミが弱点となり、デマ・憶測が拡大し、保守党の支持は急速に低下してきます。危機感を募らせた中村賢太はついに遠山の殺害を決意します。中村たちの動きをつかんだ十津川は現場に刑事を急行させたところで第6回が終わります。 

 素人のおじさん、おばさんが権力者に挑む構図は定番ですが痛快です。また、ネットを通じて素人でも簡単に世論形成ができるネット社会の危うさと恐ろしさを扱っています。さて、どのような結末が待っているのでしょうか。ここは大いに楽しみたいと思います。 

 さて、久々のお好みランキングです。今回は連載小説のみ扱います。特集作品は次回に掲載します。

 いつものようにA群は好みの作品群です。B群も嫌いではありません。C群はどちらかというと好みから外れた作品ですが今月号にはありませんでした。

 

A群

1位 「イノセント・デイズ」 早見和真

2位 「生死の分水嶺陸羽東線」 西村京太郎

3位 「暗幕のゲルニカ」 原田マハ

4位 「冬を待つ城」 安部龍太郎

5位 「金魚鉢の夏」 樋口有介(新連載)

6位 「死んでたまるか」 伊東潤(新連載)

7位 「アシタ、デキル?」 山本幸久

8位 「波止場にて」 野中柊

9位 「水曜日の凱歌」 乃南アサ

10位 「フォトグラフ テン・ストーリーズ」 乙川優三郎

11位 「ゆらやみ」 あさのあつこ

12位 「転がらない球Ⅳ 名前のない古道具屋の夜」 柴田よしき

13位 「抱く女」 桐野夏生

 

B群

14位 「チャンキ」 森達也

15位 「私家本 椿説弓張月」 平岩弓枝

16位 「星夜航行」 飯嶋和一