わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

原田マハ「暗幕のゲルニカ」(新連載)小説新潮2013年7月号

 今回の題材はピカソゲルニカです。本誌に2010年9月から2011年6月に連載された「夢をみた」はその後、「楽園のカンヴァス」として単行本化され、第25回(2012年)山本周五郎賞を受賞しました。その時の題材はアンリ・ルソーの「夢」でした。ルソーを取り上げた次はピカソがくることは「楽園のカンヴァス」を読んだ読者なら順当にうなずけますね。 

 主人公は瑤子(ようこ)。書き出しは10歳の瑤子がニューヨーク近代美術館(MoMA)でゲルニカにくぎ付けになった過去の記憶から始まります。 

 その後、物語は1937年のパリに移ります。場所はピカソのアトリエです。パリ万博でのスペイン館の壁画制作依頼を受ける場面になります。題材を模索するピカソは、同年4月にスペイン内戦でゲルニカ空爆された悲惨な新聞写真を見たところで一旦途切れます。章のタイトルは、「1937年4月28日 パリ」です。ピカソゲルニカ空爆の写真を見た日にちとなっています。 

 次の章は、2001年のニューヨークに移ります。物語は第1話ということもあり、瑤子の現在の生活場面や経歴が紹介されています。瑤子はニューヨーク大学で美術史修士コロンビア大学で美術史博士号を取得したピカソ研究者です。現在はMoMAのキュレーター(学芸員)として働いています。夫・イーサンは大手投資銀行でアートコンサルティング業務を10年以上勤めたのちに独立していることが紹介されています。 

 第1話の最後は、瑤子が地下鉄Eトレインで5番街/53丁目駅を下車し、地上に出る直前で爆発音を聞いたところで終わります。同年9月11日に起こったワールド・トレード・センターへの旅客機による自爆テロを取り上げています。章のタイトルは、「2001年9月11日 ニューヨーク」となっています。 

 第1話を見る限り、章のタイトルはその章でもっとも結論的に描写し、次につなげたい出来事の日にちと場所をタイトルにしています。この作品では今後ともこのスタイルで統一するような気がします。読者にわかりやすいタイトルで好感が持てます。 

 この作品は「楽園のカンヴァス」の姉妹編のような印象がありますが、「楽園のカンヴァス」が優れた作品でしたので、姉妹編的な作品はファンとしては大歓迎です。反戦のシンボル「ゲルニカ」をアルカイダによるテロと結びつけて展開されようとしていますので、単なる姉妹編以上の新たな広がりも予感させます。またまた楽しみな作品が登場しましたね。