わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

早見和真「イノセント・デイズ」(新連載)小説新潮2013年4月号

 物語は、死刑執行のその日の朝から始まります。死刑囚は田中幸乃(ゆきの)。32歳。死刑囚の単独室の描写はよほど興味のない限りほとんど一般には読む機会はないと思います。作者は本来ならば極限状況であるはずの場面を静謐と描いています。私はこの透明感に一気に惹きつけられてしまいました。

 主人公は田中幸乃なのか、田中の顔見知りの女性刑務官なのか、プロローグからはまだ判然としません。

 その後、物語は裁判を傍聴するのが趣味の19歳の女子大生の話題に移ります。しばらくはこの女子大生の日常やいくつかの裁判の傍聴風景が描かれますが、その中に田中の裁判の話題が出てきます。田中の生い立ち、犯罪の状況、周囲の目撃証言、マスコミ報道、裁判の代表撮影、傍聴券をめぐるやりとり、裁判傍聴者の反応、一般市民の反応などなど田中をめぐる裁判の風景が多方面から描かれています。

 さて、この女子大生は就活で刑務官に内定します。ここに至って冒頭の女性刑務官がこの女子大生の現在の姿であることと結びつきます。また、作品はこの女性刑務官をとおして田中の生き方や死刑に関することを題材にして展開されるものであることを予感させて第1話が終わります。

 何と魅力的な連載が始まったことでしょう!しかも3つもです。次(その3)は、「蛍の森」(石井光太)について書きます。