わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

真山仁「沈黙の代償」(最終回)小説新潮2012年10月号

 この作品は2011年12月号から連載されていて、連載当初から夢中になってしまった作品です。私は農業政策やバイオテクノロジーに関する知識はほとんどありませんでしたので、この作品に登場する用語や意義については、その都度、新たな知識を得る思いでした。このように無理なく知らない分野を垣間見ることができるのも総合小説雑誌のいいところです。これが一般の雑誌ですと関心がなければ飛ばしてしまいます。物語だから内容に踏み込めます。 

 たとえば、私が初めて知った言葉では、「ネオニコチノイド系農薬」「GMO(遺伝子組み換え作物)」などがあります。中国が大変な勢いで砂漠化しており、そのために猛烈な勢いでGMO開発や作物の買い付け、アフリカの用地買収に取り組んでいること、GMO開発には知的財産権がからんでいること、すなわち、他社が品種改良した種のDNAを解読し特許申請してしまうことなどがありました。 

 登場人物はネオニコチノイド系農薬開発者で主人公の平井宣顕(のぶあき)、養蜂家の代田悠介(ゆうすけ)、農水省の若手キャリア・秋田一恵、GMO推進を目論む国会議員の早乙女麗子などです。特に早乙女は傲慢でヒステリックでいかにも実在しそうな国会議員として描かれていました。これらの配役はわかりやすく、展開がスリリングで緊張感がありました。全体的にはNHKの土曜ドラマにでもなりそうなストーリーでした。(もっとも、このままテレビドラマ化したら、某女性国会議員からクレームが来そうです。) 

 最終回では、国民の支持を失っている総理大臣がGMO研究所設置法案と予算案を通してから、国会を解散してしまいます。何も決められないと揶揄されていた総理が充実感に輝いた顔をテレビが映し出しているところで物語を終えています。最後のアイロニカルな描写は作者の遊び心ですね。 

 総じて、今月号はどの作品も展開に動きがあり読み応えがありました。そこで、今月号も私の好み順に連載作品のランキングを載せます。A群は好みの作品群です。B群も嫌いではありません。C群は好みから外れた作品です。

 なお、3位の「沈黙の代償(真山仁)以外に、1位「キアズマ」(近藤史恵)、2位「青空に広がる ふたつめの庭」(大崎梢)、16位「ファーストレディ」(篠田節子)、23位「彦山ガラガラ」(帚木蓬生)については別のページで感想を載せていますので、よろしければご覧ください。

 

A群

1位 「キアズマ」 近藤史恵(最終回)

2位 「青空に広がる ふたつめの庭」 大崎梢(最終話)

3位 「沈黙の代償」 真山仁(最終回)

4位 「波止場にて」 野中柊

5位 「獅子の城塞」 佐々木譲

6位 「海峡の絆」 熊谷達也

7位 「マテリアル・ライフ」 仙川環(新連載)

8位 「宰領 隠蔽捜査5」 今野敏

9位 「ここからはじまる」 はらだみずき

 

B群

10位 「神様が降りてくる」 白川道

11位 「底のないポケットⅣ 名前のない古道具屋の夜」 柴田よしき

12位 「ドンナ ビアンカ誉田哲也

13位 「十津川警部 新宮に徐福伝説の謎を追う」 西村京太郎

14位 「月光の誘惑」 赤川次郎

15位 「メイのいない五月」 杉山隆男

16位 「ファーストレディ」 篠田節子

17位 「うろこ」 千早茜

18位 「続・寺内貫太郎一家」 烏兎沼佳代

19位 「風屋敷の告白 還暦探偵」 藤田宜永

20位 「星夜航行」 飯嶋和一

21位 「べんけい飛脚」 山本一力

 

C群

22位 「島津戦記」 新城カズマ

23位 「彦山ガラガラ」 帚木蓬生

 

 以上で今月号の感想はおしまいです。11月号が刊行されましたら、また感想を書きます。