わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

大崎梢「青空に広がる ふたつめの庭」(最終話)小説新潮2012年10月号

 この作品は2010年10月号から不定期で連載されていました。最終話は保育士の美南が晴れて隆平と結婚するところでハッピーエンドです。 

 保育園での卒園式のシーンは、勤め帰りの電車の中で読んでいたのですが、思わず目が潤んでしまいました。そもそも私は学園ものが好きで、特に卒業式シーンはだいたいダメです。隆平はいわゆる一流企業の一流ビジネスマンでしたが、父子家庭となって育児のためにエリート街道からは外れました。隆平が父子家庭で何とか一人息子・旬太を保育士のサポートを受けながら無事保育園の卒園式まで育て上げた苦労を思うと感情移入してしまったのです。 

 話がそれますが、ちょうど、この感想を書いている今年の10月6~8日の連休中は、NHK全国学校音楽コンクール全国コンクールが中継されていました(*)。学園ものが大好きな私としては当然、この3日間は小中高と全部見ていました。子どもたちのピュアな歌声は心が洗われます。(*NHKのホームページで当日の演奏が見られます。「NHK全国学校音楽コンクール」で検索し、「Nコン on the Web」のページにあります。2012年10月24日追記) 

 さて、話を戻します。作者は、美南が保育園の保護者と結婚することに対して、職業倫理に反するのではないかと悩んでいる過程を丁寧に描いていました。確かに、担任保育士が自園の現役保護者と結婚するのは禁断の愛のようなものですので、穏やかな話ではありません。しかし、当該園児が卒園するまで公表を避ける、次年度の担任を外れるなどの配慮をし、そのことを周囲が理解していた点は良好な職場関係といえます。このような美南や保育園職員の態度には好感が持てました。 

 ただ、もし隆平がイケメンでもなく、私服のセンスもさえなく、育児に疲れたただのおっさんでしたら、美南が惹かれることはあったでしょうか。確かに、隆平は保育園に息子を預けている過程で変わってきていました。美南は隆平の変化に人間的な魅力を感じたのだと思いますが、隆平のルックスが影響していることも大いにあったといえそうです。隆平にしても終始モテモテで、言い寄る美人にもときめかず担任の保育士の美南に惹かれていく設定は出来過ぎの感がありました。 

 今後は、美南との関わりでさらに隆平の人格が陶冶されることを祈りたいですね。隆平はイケメンですが、元々が生硬な人間ですから、今後の人生で美南にもそれなりの努力が必要となりましょう。旬太のためにも2度目の離婚は避けたいですからね。 

 保育士が現役保護者と結婚する設定はやや非現実的でしたが、この点を除けば、描写は丁寧で、浮かれることなく大人の態度でハッピーエンドに向かいましたので、満足感の高い作品でした。保育園ものは少ないと思いますので、ぜひ多くの方にお勧めしたい作品です。

 

 後編(3作目)は、「沈黙の代償」(真山仁)です。