わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

坂東眞砂子「Hidden times」(最終回)小説新潮2012年9月号

 この作品は2011年9月号から連載されていました。ストーリーは3つの時代の物語が並行して進行していました。1つは明治時代のニューカレドニアでのニッケル鉱山で鉱夫をしている「竹松」の物語です。2つは戦争末期のルソン島で必死に生き延びようとしている少尉「睦郎」の話です。3つは現在の南太平洋ソロモン諸島イリアキ島でツアーコンダクターをしている「美郷」を主人公にした物語です。この約60年ずつの時代差の物語をどのように収束させるのか大きな期待で毎回読んでいました。 

 しかし、最終回では期待を大きく裏切られた思いです。カバというイリアキ島の地酒を飲んで、かなり早い段階で原因不明の死を遂げたはずの「北添」が突然よみがえっています。1年間続いた竹松と睦郎の話はすべて北添の夢だったという結末です。また、美郷も夢を見ていたようです。美郷の夢は要するに「汰久也」とベッドを同じくした夢をみていたというような結末です。この物語のキーワードになっていたはずのサリタというイリアキ島に伝わる砂絵文字の秘密も、結局はすべて北添の夢の中の話という結末ですので、秘密の解明でもキーワードでもなかったということでした。最終回には突然、「真一」が登場していますが、この人は誰?第2話を読み返して北添のことを「真さん」と呼んでいる場面がありましたので、北添のことだとわかったという不親切ぶりです。 

 もし、今後、単行本にまとめるようでしたら、抜本的にストーリーの結末を書き換えないと読者の読後感は大いにブーイングだと思います。竹松や睦郎の生きざまの描写や美郷の現在のイリアキ島での生活描写が好印象でしたので、ぜひ作品の完成度を高めていただきたいと思います。