わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

烏兎沼佳代「続・寺内貫太郎一家」小説新潮2012年5月号

 人事異動があり身辺が少し慌ただしくなっていましたが、この大型連休中は雨が降れば読書、晴れれば芝の中の草取り、週1回のスイミングと生活のリズムがだいぶ戻ってきました。 

 久々ですが、私の好みの順に連載連作作品のみランキングしてみます。いつものようにA群はかなり良かった作品群です。B群も嫌いではありません。C群は好みから外れる作品群です。

 

 はじめに主な作品のワンポイントコメントです。

 

 「沈黙の代償」(真山仁)、「Hidden times」(坂東眞砂子)はストーリー展開に動きがあり緊迫感がある作品で一押しです。「沈黙の代償」の詳細は前ページに載せています。

 

 学園ものの「キアズマ」(近藤史恵)は私の好みです。この作品も詳細を前々ページに書きましたのでそちらをご覧ください。

 

 「獅子の城塞」(佐々木譲)は天正年間にローマに石積修行に行くスケール感の大きさが良いです。

 

 「波止場にて」(野中柊)は大正ロマン漂い大正から昭和初期の横浜や山の手の風景を想像できる上品な作品です。

 

 糸井美幸という色香漂う怪しいクラブのママが出没する「内偵の女」(奥田英朗)や魚住久江巡査部長シリーズの「ドンナ ビアンカ」(誉田哲也)は展開がわかりやすく月刊誌の連載のツボを心得ている作風に好感が持てます。

 

 「海峡の絆」(熊谷達也)は2011年9月号の第1作の暴風雨の描写はまるで自分が嵐の中にいるような錯覚を覚えるほどで圧倒されました。その時のインパクトが未だに強く残っていてその延長上で読んでいます。

 

 「赤猫異聞」(浅田次郎)はともかく巨匠が自在に日本語をあやつり余裕で文章を展開していました。安心して最終回を読み終えることができました。

 

 「ゆうらり飛行機」(朱川湊人)はクライマックスでの空を飛ぶ白日夢は以前、私もこのブログで同じような夢体験を書いたことがあり不思議な一致がある作品です。

 

「続・寺内貫太郎一家」 烏兎沼佳代 

 さて、この作品は故向田邦子の処女作の後編版を烏兎沼佳代が補作している作品です。向田邦子といえば、私が30年前に本誌を読んでいたときに「思い出トランプ」のシリーズに夢中になった作家です。当時の編集者はよく「珠玉の短編小説」というキャッチコピーを付けましたが、向田の作品は本当に「珠玉」の作品でした。 

 ところで、この「続・寺内貫太郎一家」ですが、残念ながら、先月号(4月号)の第1話に違和感を覚えたせいかあまり好きになれません。児童虐待家庭内暴力、DV、パワハラという言葉が市民権を得ている今日、貫太郎が家族をやたらと殴ったり、投げ飛ばしたりする描写は30年前、40年前の作品なら笑って受け入れられたでしょうが、今ではやはり許されない行為です。発表する時代が違うのではないかと眉をひそめてしまいます。

 

A群

1位 「沈黙の代償」 真山仁

2位 「Hidden times」 坂東眞砂子

3位 「キアズマ」 近藤史恵

4位 「獅子の城塞」 佐々木譲

5位 「波止場にて」 野中柊

6位 「内偵の女」 奥田英朗

7位 「ドンナ ビアンカ」 誉田哲也(新連載)

8位 「海峡の絆」 熊谷達也

9位 「赤猫異聞」 浅田次郎(最終回)

10位 「ゆうらり飛行機」 朱川湊人

 

B群

11位 「月光の誘惑」 赤川次郎

12位 「魔術師の視線」 本多孝好

13位 「神様が降りてくる」 白川道

14位 「貯められない小銭Ⅷ 名前のない古道具屋の夜」 柴田よしき

15位 「春風伝―高杉晋作萩花の詩」 葉室麒

16位 「脊梁山脈」 乙川優三郎

17位 「風屋敷の告白・還暦探偵」 藤田宜永

18位 「サンカーラ―この世の断片をたぐり寄せて」 田口ランディ

19位 「島津戦記」 新城カズマ

20位 「宰領」 今野敏

21位 「星夜航行」 飯嶋和一

22位 「吉次の値打ち」 北原亞以子

 

C群

23位 「河童の秘薬 しゃばけ」 畠中恵(シリーズ最終話)

24位 「ほろびぬ姫」 井上荒野

25位 「続・寺内貫太郎一家」 烏兎沼佳代