わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

真山仁「沈黙の代償」(第6回)小説新潮2012年5月号

 この作品はミツバチの集団脱走・大量死とネオニコチノイド系農薬との因果関係説と農薬事故をテーマに描いています。主人公は大泉農創(だいせんのうそう)という農薬会社でネオニコチノイド系農薬の「ピンポイント」を開発した平井宣顕(のぶあき)と元戦場カメラマンで養蜂家の代田悠介(ゆうすけ)といっていいと思います。

 他にも農水省の若手キャリア・秋田一恵、野党・くらしの党の“必殺仕分け人”早乙女麗子などたくさんの人物が登場してきますが、配役がはっきりしているので月刊の連載小説でも立ち位置は記憶に残りやすい構成となっています。

 物語は平井の息子がたまたま夏休み自然教室で代田の養蜂の様子を見ていた時に空中散布をする無人ヘリコプターが飛来してきて、平井の息子が農薬を浴びてしまい急性中毒で緊急搬送されるところから始まります。息子が浴びた農薬は父親である平井宣顕が開発したものだったという設定です。

 平井は研究職からCSR推進室長に異動になります。5月号では企業の社会貢献とは何かと悩みます。そのような中で事件はまた起こりました。今度は飼い犬のタローのダニ退治の薬に反応して息子が発作を起こしてしまいました。ダニ退治の薬にもピンポイントが使われていたのを失念していた平井は農薬メーカーの社会的責任は新製品を開発したなら同時に解毒剤を開発することが企業の社会的責任だと思い至ります。「きれい事」ではない社会貢献活動の一つの回答です。どちらの企業にもヒントになりそうな事例です。

 次号以降では雑誌企画で代田と平井の対談があります。早乙女の政治活動、秋田たち官僚の対応、大泉農創の企業の論理、代田や他のNPOメンバーによる無農薬推進運動など今日的な話題満載で次号以降の展開に目が離せません。