わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

坂東眞砂子「Hidden times」(第5回)小説新潮2012年1月号

 この作品は時代も主題設定もまったく違う3つの物語が並行して展開しています。

 1つは、南太平洋ソロモン諸島にあるイリアキ島でツアーコンダクターをしている美郷を主人公にした物語です。時代設定は現在です。主題は同島に伝わるサリタという砂絵をめぐる島民の死生観やタブーに関する出来事を扱っています。

 2つは、太平洋戦争末期でのルソン島での敗残兵のありさまを描いています。主人公は「睦郎」(むつろう)。睦郎はエンジントラブルで特攻しそびれた特攻兵で階級は少尉です。物語はルソン島から飛龍という重爆撃機を改良した新型試作機を操縦し、急きょ南東方面に飛んで行くことになります。何やらニューギニア方面です。

 3つ目の主人公は「竹松」(たけまつ)です。時代設定は明治の後半となっています。竹松はニューカレドニアでのニッケル発掘への移民事業に応募してきた鉱夫です。鉱山での博打に明け暮れるなどの怠惰な生活が描かれています。

 次第にこの脈絡の見えなかった3つの物語に共通項が見えてきました。いずれも南太平洋のソロモン諸島方面に場所が絞られてきた点です。何となくもう一つの共通項あるいは3つを結びつけるキーワードはニッケルではないでしょうか。このあとこの3つのストーリーが1つになるはずです。どのように1つに結びつくのか興味津々です。