わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

曽野綾子「天山の小さな春」小説新潮2012年1月号

 曽野氏ご自身や担当編集者はこの作品をどのように評価しているのでしょうか。私は大いに不満足です。全体が4つに分断されてしまってまとまりがありません。 

 1つは書き出しです。「私ぐらいの年になると」一種の思い込みで自分と同年代の人としか付き合えなくなるものだと10行ほど述べながら、次のパラグラフでは、自分は年下の友利文明(ともりぶんめい)とはそのようにならないのが不思議だと逆の展開となります。友利とのフランクな付き合いができるのなら、同年代の人としか付き合えなくなるものだと一般論をそれほど展開しなくてもよかったのではないかと思います。私を中心にとらえながら別のことを言っていますので、まとまりがありません。2つに分断されている印象を持ちました。 

 そのあとは、友利との中国大陸を横断する長距離鉄道旅行の紀行文となります。この紀行文は中央アジアの悠久感が漂い素晴らしい文書です。ただし、これが3つ目の分断と感じてしまいます。 

 この後に、旅行先でかつてあった殺人事件らしき少女の死に話が及び終結を迎えます。これが4つ目の分断です。この殺人事件らしき顛末は付け足しのようで不要だと思いました。短編ですので1つの主題にそって、まとまりのある作品を提供してほしいものです。