わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

宇江佐真理「落ち葉踏み締める 古手屋喜十 為事覚え」小説新潮2012年1月号

 この作品は涙なくしては読みきれない何とも哀しい作品です。 

 今回は、日乃出屋の喜十はほとんど登場しません。物語の中心はもっぱら14歳の新太です。新太は6人兄弟の長男。父親は酒の飲みすぎで亡くなり、母親を助けてシジミ採りをして生計を支えています。 

 しかし、母親が大いに問題親という設定です。末弟の捨吉は夫が亡くなった直後に生まれましたが別の男との間の子どもです。そのことを14歳の新太に告げて生活が苦しいから捨ててきてほしいと頼みます。捨吉を捨ててきた先が日乃出屋という設定です。 

 さらに、8歳の娘を身売りしてその代金で昼から酒を飲むようになります。挙句の果てには酔っぱらいながら捨吉に会いたいと言い出し、悲劇は起こります。新太は母親の身勝手で自堕落な生活に絶えかねついに母親の首を絞め、自分も大川に身投げして自殺してしまいます。 

 ダメな親の元で一生懸命に生活を支えてきた新太への同情は禁じえません。現代でもどうしようもない問題親が引き起こす事件が数多く報道されています。その最たるものが虐待死事件です。子どもはどんなに虐待されても「虐待されていない」と親を庇うといわれています。 

 もし、身近に虐待された子どもがいたら、私は何ができるでしょうか。個々の子どもへの支援には無力ですが、問題に関心を持ち続け、児童養護に奮闘している関係者への敬意と、できる範囲でのサポートをしていきたいと思っています。