わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

垣根涼介「リヴ・フォー・トゥデイ 君たちに明日はないPART4」小説新潮2012年1月号

 こたつに入って毎晩1作づつ読みすすめる楽しみを味わっています。今月号も特集作品で味わい深い作品をあえてランキングしてみます。

 

 いつものようにA群は特に味わい深い作品群です。B群は作品として安定していて安心して読了できた作品群です。C群はやや物足りない作品群です。

 

A群

1位 「リヴ・フォー・トゥデイ 君たちに明日はないPART4」 垣根涼介

2位 「落ち葉踏み締める 古手屋喜十 為事覚え」 宇江佐真理

3位 「訓練 隠蔽捜査外伝」 今野敏

 

B群

4位 「てがた」 千早茜

5位 「バタークリームと三億円」 朱川湊人

6位 「新春の客 お鳥見女房」 諸田玲子

7位 「遍路道・同行三人 空蝉風土記」 さだまさし

8位 「いつかの一歩」角田光代

 

C群

9位 「火星の運河」 恩田陸

10位 「天山の小さな春」 曽野綾子

 

「リヴ・フォー・トゥデイ 君たちに明日はないPART4」 垣根涼介

 毎回このシリーズはとても充実していて好きなシリーズです。このシリーズの魅力は毎回、このシリーズを読むだけでおおよそそれぞれの業界事情がわかるような描き方となっていることです。今回は、外食産業を扱っています。 

 物語は、誰が読んでもすかいらーくグループを想起させる場面設定で切れ者の森山総店長をリストラさせてはならない使命を帯びてリストラ面談をするというややこしい設定です。 

 物語は森山が勤務する「ベニーズ」での現在の勤務事情や日常から始まって、森山の幼少時代から高校、大学の生育歴を丁寧に描いています。四谷大塚らしきエリート進学塾、開成中学らしき超進学校への入学、受験ママのことなどが描かれています。素直な優秀児童は高校で転機が訪れます。森山はバイトとボランティア活動に熱中し始めます。森山の父親は森山の良き理解者として描かれています。森山の自立は父親の理解があって今日がある設定です。森山にとってこれは幸運だったと思います。 

 物語は今回のテーマである「リヴ・フォー・トゥデイ」(“今を大切にしなさい”ぐらいの意)を軸に均整の取れた展開で終結に向かいます。最後は外資系損保会社に勤める中高時代の友人に誘われ、「ハイラークグループ」を辞めることになります。超進学校を卒業しただけに友人も一定の人材がいる設定です。うらやましい世界の出来事と言ってしまえばそれまでですが、明日のために今日を犠牲にする生き方を止め、今を大切に生きることを説いた良い作品です。