わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

朝井リョウ「水曜日の南階段は」小説新潮2011年12月号

 今月号は「最後の恋」というタイトルでいわゆる恋愛小説特集です。最後の恋というと、今際の際からみた直近の恋のことをイメージしましたが、それでは何の意味もありませんね。本誌編集者は、現在進行形の恋を最後の恋と自己暗示にかけることや、ある過去の特定の恋を頑なに最後の恋と思い続けることなどを例示し、イメージを膨らませています。最後の恋が「最上の恋」ということでしょうか。素敵なタイトルですね。 

 さて、収録された作品はすべて男性作家による恋愛小説でした。恋愛小説というと敬遠したくなりますが、作品は秀作が多く満足させていただきました。満足させていただいたランキングです。

 

1位 「水曜日の南階段は」 朝井リョウ

2位 「エンドロールは最後まで」 萩原浩

3位 「僕の船」 伊坂幸太郎

4位 「3コデ5ドル」 越谷オサム

5位 「イルカの恋」 石田衣良

6位 「桜に小禽」 橋本紡

 

「水曜日の南階段は」 朝井リョウ

 私が一番好いと感じたのは、「水曜日の南階段は」(朝井リョウ)です。私は元々、高校生ものが大好きです。この作品は私の期待を裏切らない作品でした。 

 作品は、軽音楽部で3年間ライブ活動に熱中していた高3の男子高校生3人を中心に物語は展開します。3人は大学受験を目指しながらクラブ活動に青春を傾けた普通の高校生です。 

 センター入試前後の高校生の日常やクラス内での出来事がみずみずしく描かれています。夕子の淡い恋心と自分の進路への確固たる信念、それに比べて神谷光太郎(俺)が公言して憚らなかった大学生活への展望がふわふわしたのであったことを自覚する心情など、この時期の高校生の不安と卒業後の進路によせる交錯した気持ちが極めて良質なバランスで描かれていると思います。 

 また、職員室に英文和訳を教わりに行く「俺」と先生の情景など、この時期の先生たちの生徒への関わり方の描写もリアル感がたまらなく好いです。子どもたちの人格に敬意を表せる教師には自然と子どもたちが寄ってくるものだと思います。 

 全体をとおして良質のさわやかな作品です。未来が待っている高校生ものはやはり好いですね。