わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

さだまさし「空蝉風土記 金沢・夜神、または阿神吽神」小説新潮2011年7月号

 前回の第1作は、「はかぼんさん」という不思議な習俗を京都の風情と織り交ぜてミステリアスに仕上げていて結末に唖然とし、作者の力量に驚嘆しました。 

 今月号は第2作目です。今月の習俗は、石川県の旧畔神(あぜがみ)村で数百年前から行われている漂着物に神が宿るという「神寄せ神事」です。しかし、今回は前作の印象が強かったせいか、人情話でほろりとさせられましたが、作風に早くもマンネリ感を感じてしまい、やや質感が落ちる印象を持ちました。両作品ともその時々の登場人物は生き生きと描きますが、主人公の「私」は聞き役に徹する手法をとっています。読者は影が薄く個性が伝わらない「私」を別の人物とは認識せず、同じ人物として読んでしまいます。そのため、人情話に仕立てても、ミステリーに仕立てても、主人公の個性が伝わらないので同じような作風と感じてしまうのです。私がマンネリ感を感じてしまったのはこのような理由からだと思います。