わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

窪美澄「星影さやかな」小説新潮2011年6月号

 「こうきましたか」というのが第一印象です。この作品は小説新潮2010年6月号収録の「なすすべもない」、同2011年2月号「平熱セ氏三十六度二分」と登場人物、場面設定が同一ですので事実上の連作です。

 

 「なすすべもない」はみひろが圭祐と婚約中でありながら圭祐の弟・裕太を誘惑し性交渉をしてしまい、結婚が延期になるという完全な官能小説でした。「平熱セ氏三十六度二分」は裕太が母子家庭の母親と密やかな恋愛に発展しそうな雰囲気で物語が終わっており特集号の設定どおり恋愛小説です。

 

 今回の作品は、圭祐、裕太、幼馴染みのみひろの中・高校生時代に話を遡及し、父親の不倫を織り交ぜて圭祐の甘酸っぱい記憶を描いた学園小説となっています。それぞれの作品を初めて読む読者には違和感はないと思いますが、例えば、作品集の中で1冊にまとめられた時には作風が違いますので、まとまりのない作品と映ってしまうような気がします。

 

 今後、作品が続くようでしたらつじつまの合うような設定に収束してほしいものです。そのときに一読者として勝手な期待を申すなら、みひろの生理がはじまるときの性衝動の扱い(2010年6月号「なすすべもない」)をどのように収束させるのかがプロの作者に期待するところです。それから、題名の語音が心地よく素敵です。