わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

さだまさし「空蝉風土記 京都・はかぼんさん」小説新潮2011年5月号

 今月号には新連載・シリーズが3作ありました。そのうち一番印象に残ったのが、「空蝉風土記―京都・はかぼんさん」(さだまさし)です。 

 物語は、白装束の中学生の水死体から始まります。京都の2人の友人は水死体は「はかぼんさん」が原因とぽつりと言い合います。その後、主人公の「私」は高瀬川のほとりに佇む若夫婦を発見します。そこに現れた白装束の中学生らしき人物。何やらお祓いのような仕草をしています。「私」はその不思議な光景の正体を直接、若夫婦から聞き出し、その行為が京都の旧家に伝わる「はかぼんさん」という習俗であることを教わります。はかぼんさんは跡取りをもうけるための儀式です。しかしこの儀式は3回失敗し、生まれてきた子どもが男子だった場合は養子に出されるという何とも厳しい宿命なのです。 

 どんでん返しが最後に待っていました。私の2人の友人ははかぼんさんで相互の家に養子に出された間柄でした。はかぼんさんをめぐる蒸し暑い京都の風情もよく伝わってきました。作者の力量には驚嘆の一言です。