わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

谷村志穂「ストーブ」小説新潮2011年2月号

 今月号は恋愛小説の特集でした。編集者は恋の旧字「戀」から「糸し糸しと言ふ心」とネーミングし特集号としています。この遊び心とセンスには感心しました。ただ、残念なのは編集者の思いに沿った作品が集まらなかったように思いました。どの小説も内容が薄く、中途半端な印象です。

 ところで、今月号はページも薄いです。ついに500ページを切ってしまいました。せめて550ページ前後は確保してほしいものです。

 以下、複数回に分けて、いくつかの特集号の作品についての感想です。

「ストーブ」 谷村志穂

 図書館勤務の主人公の姉と北海道支局に転勤していた記者との逢瀬の場所である廃屋のような仕事場を弟と尋ねるストーリーです。季節は大みそかです。素材には、北海道の郷土料理である「鯨汁」、猫の交尾、廃屋でのストーブ・ベッド、記者の死亡記事、弟のリストラ、父親の入院生活などがあります。ただ、これらの素材がこなれていない印象でした。

 一つ違いの弟が姉の密会の場所を一緒に尋ねるもの不自然です。不自然なら不自然なりの非日常を小説なら追求できるわけですので徹底的に追求するとか、厳寒の北海道の風景感をもっと前面に出した展開にするとか、どこかに焦点を絞って書いてほしかったと思います。