わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

井口ひろみ「おんなじ羽のゴジラがいる」小説新潮2010年10月号

 高1の翔太は三十路のバンドの熱烈なファン。同年代ではかなりマイナーなファンの設定です。物語は、ゴジラ顔の強面の柔道部員が実は同じバンドのファンだったことがわかり、ブログという現代のIT環境の中で友情を育んでいくさわやかな青春小説です。 

 ファンクラブに加入して追っかけも経験したことがあるのではないのか思えるようなリアルな展開がいいですね。実は我が家の娘もある三十路バンドの追っかけをしています。最初の追っかけは母親同伴で宿泊までしています。小説と同じです。 

 物語では、美人のクラスメートとのライブより、ゴジラとのライブを選ぶのです。それらのことはすべてブログに綴っているのですが、そのブログをすでにゴジラは翔太のブログであることを確信していましたので、翔太の真意をすべてお見通しの中で友情が深まります。 

 それほどのファンでない美人とのライブデートより、「同志」とのライブの方が大事なファン心理はいいですね。わたしもあるジャンルの歌を毎年5~10回聴きに行っています。私は同伴者が異性だったら、仮にその人が本当にファンであっても、いろいろな“事情”に注意を払ってしまって2人だけでは一緒に行かないと思いますが、さてどんなものでしょう。 

 それにしても、この物語のエンディングはファン心理をついた何とも幸せな結末です。マイナーと思っていた同年代のファンが続々とさいたまスーパーアリーナの最寄駅(たぶん「さいたま新都心駅」)に結集しているのです。この高揚感は最高です。