わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

池井戸潤「鋼のアリス」小説新潮2010年8月号

 8月号の発売を心待ちにして、真っ先に読んだのが「鋼のアリス」です。連載中の作品の感想を書くのはフライングのようで気が引けますが、いよいよ佳境に入ってきましたので書かずにはいられません。ご容赦ください。 

 「鋼のアリス」は2010年4月号から連載しています。毎回、テーマがはっきりしていて、テレビの連続ドラマを見ているようです。 

 4月号は、まさにプロローグで、一流メーカーの「東京クロノス」で働く若手営業マンの巻、財務課長の庄司、取締役製造部長の寺尾がそれぞれリストラされるところから始まります。一般に、リストラや左遷には2とおりあると思います。1つは仕事ができなくてリストラや左遷される場合、もう1つは仕事はできるのですが会社の方針に合わない場合です。彼らはいずれも後者のタイプで描かれています。いずれにしてもリストラは身につまされる展開でした。 

 5月号は、寺尾が場末の町工場の「アリス精機」に再就職し、ものづくりの職人気質の工員の反感の中で自ら旋盤に取り組む葛藤と「アシダ工業」のコンペに名乗りを上げる過程を描いています。しかもコンペの最大のライバルは「東京クロノス」という設定です。 

 6月号では、寺尾は財務管理が脆弱とみた「アリス精機」に庄司を迎え財務改革に取り組みます。少しずつ役者が揃ってきたというところです。 

 7月号では、コンペに臨むには営業職がいなければ対応できないことを感じた寺尾は、庄司の推薦で冒頭に登場した若手営業マンの巻を迎えます。一流企業勤めだった巻が町工場に転職する葛藤の描写は痛切です。しかし、これでコンペ攻略の陣容が固まり、いよいよ戦闘モードといった展開となってきました。

 そして、待ちに待った8月号です。巻のコンペ攻略の営業が始まり、ますます先が面白くなってきました。9月号が待ち遠しいですね。