わたしの小説新潮日記

小説新潮の感想を中心としたブログです

宇月原晴明「足利義鳥の最後」小説新潮2010年7月号

 宇月原ファンには叱られるかもしれませんが、室町幕府25代将軍足利義鳥なる架空の人物を主人公にした怪奇小説と言ってよいのではないかと思います。 

 この小説は全編を通じてピンクの煙でも漂っているかのような妖艶な世界です。義鳥の最後も義鳥を護衛する剣阿弥(つるぎのあみ)5人衆の討ち死にも全く実在感がありません。幼少期の追想と死に直面しながらも実在感のない現在が目まぐるしく交錯し読者を混乱させます。兄弟の性別役割も過去と現在で逆転し、兄(姉)が討伐軍の大将のようでもあり、それ自体がアヘンによる幻覚(あるいは廃人状態による自己破壊)のようでもあります。